つばめ (人工衛星)
この項目では、JAXAが開発した超低高度衛星技術試験機について説明しています。東京工業大学が開発した超小型衛星については「TSUBAME (人工衛星)」をご覧ください。 |
超低高度衛星技術試験機「つばめ」 (SLATS) | |
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所属 | JAXA |
主製造業者 | 三菱電機 |
公式ページ | 超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS) |
国 | 日本 |
運用者 | JAXA |
国際標識番号 | 2017-082B |
カタログ番号 | 43066 |
目的 | 超低軌道を飛行する衛星技術の確立 |
設計寿命 | 2年以上 |
打上げ場所 | 種子島宇宙センター |
打上げ機 | H-IIAロケット37号機 |
打上げ日時 | 2017年12月23日[1] |
運用終了日 | 2019年10月1日 |
停波日 | 2019年10月1日 |
物理的特長 | |
本体寸法 | 2.5 m (X) x 5.2 m (Y) x 0.9 m (Z)[2] |
質量 | 383kg[2] |
発生電力 | 1140 W以上(暫定)[2] |
主な推進器 | 20 mNイオンエンジンx1[3]、化学推進系 |
軌道要素 | |
周回対象 | 地球 |
高度 (h) | 268 km - 180 km |
近点高度 (hp) | 180 km |
遠点高度 (ha) | 268 km |
搭載機器 | |
原子状酸素 (AO) モニタシステム | 原子状酸素を観測する |
材料劣化モニタ | 熱制御材の劣化を監視する |
小型高分解能光学 センサ SHIROP | 低高度から高解像度の画像を得る。パンクロ画像。 |
光学センサ OPS | カラー画像 |
引用資料[4] | |
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つばめ(超低高度衛星技術試験機:Super Low Altitude Test Satellite、略称:SLATS)は、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が開発した、人工衛星の超低軌道飛行技術の確立を目的とした人工衛星。2017年(平成29年)12月23日にH-IIAロケット37号機によりしきさいと相乗りで打ち上げられた[5]。
軌道保持運用を2019年9月30日(午前9時42分)に成功裏に終了し、2019年10月1日(午後7時13分)に停波作業を実施、運用を終了した[6]。
概要
従来の技術では人工衛星を高度300キロメートル (km) 以下の超低軌道に投入した場合、通常の地球観測衛星が周回する高度600 km - 800 kmの軌道に比べて約1000倍以上の大気の抵抗を受けるため、衛星の速度が低下して大気圏に落下してしまい継続的な地球観測が不可能であった。しかし超低高度での継続的な地球観測を実用化することができれば、衛星軌道が従来より地上に近いため、従来と同じセンサを使用しても高分解能化が可能であり(同コストで高性能化)、センサを小型・軽量化しても従来と同様の性能のまま(低コスト化しても同様の性能)で観測ができるようになる。つばめはこの超低軌道飛行技術を実証するために開発された衛星である[7][8]。
つばめでは、従来から衛星のエンジンとして一般的に使われているガスジェットエンジン(化学エンジン)に比べて、燃料の使用効率が10倍高いキセノンイオンエンジンを採用することで長期間にわたって軌道高度を維持できるようにする。キセノンイオンエンジンは小惑星探査機はやぶさで使用されたことで有名になったが、つばめでは技術試験衛星きく8号で採用されたイオンエンジンのXIESに改良を加えたものを使用する[4]。
つばめはH-IIAロケットにより遠地点643 km、近地点450 kmの楕円軌道に投入された後に、ガスジェットエンジンを使って高度392 kmの円軌道に移行し、太陽電池パドルを立てた「エアロブレーキモード」に入り、大気抵抗を大きくして燃料消費を抑えながら高度を下げていく。高度268 kmで「エアロスルーモード」に移行して大気抵抗を最小化してイオンエンジンの噴射による軌道維持を開始する。高度220 kmまではイオンエンジンのみで高度の維持が可能であるが、最低高度180 kmではイオンエンジンとガスジェットエンジンを併用して高度を維持することになる。設計寿命は2年であり、打ち上げから1年9か月後までに高度271.1 kmから181.1 kmの間で6段階の軌道高度の飛行試験を実施した[6][8]。
JAXAは2019年12月24日、つばめが地球観測衛星の軌道としては最も低い高度167.4 kmを飛行したとして、ギネス世界記録に認定されたと発表した[9]。
また、超低高度での原子状酸素の影響による金色の熱制御材(多層インシュレーション:Multi Layer Insulation)のポリイミドフィルムの劣化をモニタリングする装置も備え、軌道高度300 km以下における長期間(6か月)の原子状酸素量の計測や大気曝露による材料劣化のモニタリングを世界で初めて実施し、JAXAが開発した材料が長期間の原子状酸素の曝露に耐えることも実証した[6][4]。
仕様
- 全長 2.5メートル (m), 全幅 5.2 m, 全高 0.9 m, 質量 380キログラム (kg)
- 設計寿命 2年以上
- 運用軌道高度 268キロメートル (km) - 180 km
- 軌道: 太陽非同期軌道。高度268 km以下では, イオンエンジンの電力確保のため, dawn-dusk軌道(早朝と夕方に飛来)に近い軌道(降交点通過地方時刻は16時以降)[10]
搭載機器
- 小型高分解能光学センサー (SHIROP: Small and High Resolution Optical Sensor)
- 有効開口径: 20センチメートル (cm), 焦点距離: 2メートル (m), 波長: 0.48 - 0.7マイクロメートル (μm)(モノクロ), 地上分解能 (GSD) : 高度268 kmで1 m以下
- 望遠鏡方式: カセグレン型, 検出器: 2次元CCD, 重量 19.8 kg, 電力: 27.8ワット (W)
- GPS受信機を搭載しており, 撮像対象の位置情報に対応して撮像時刻を自律的に決定する[10]。
- 小型光学センサ (OPS)
- 質量 1.9 kg, 口径 2 cm。空間分解能 30 m級のカラー画像。
- 原子状酸素モニタシステム (AMO) : 衛星の材料を劣化させうる原子状酸素 (AO) の超低高度域環境及び材料への影響を把握
- AO計測センサ (AOFS)
- 材料劣化モニタ (MDM)
脚注
- ^ 『H-IIAロケット37号機(高度化仕様)による気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)および超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)の打上げについて』(PDF)(プレスリリース)JAXA、2017年10月27日。https://www.jaxa.jp/press/2017/10/files/20171027_h2af37_j.pdf。2017年10月27日閲覧。
- ^ a b c “つばめ(SLATS)”. JAXA 第一宇宙技術部門 サテライトナビゲーター. 2023年8月27日閲覧。
- ^ 和孝, 西山、紀世志, 杵淵「電気推進ロケットエンジンを用いたミッションの現状と今後」『プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research / プラズマ・核融合学会編集委員会 編』第94巻第2号、2018年2月、60–65頁。
- ^ a b c 佐々木 雅範 (Jun 2015). “超低軌道を飛行する衛星技術の確立をめざして”. JAXA. 2017年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月3日閲覧。
- ^ 気候変動観測衛星「しきさい」と試験衛星「つばめ」打ち上げ成功 産経ニュース 2017年12月23日
- ^ a b c “JAXA | 超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)の運用終了について”. JAXA | 宇宙航空研究開発機構. 2019年12月24日閲覧。
- ^ 超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS) JAXA
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2019年12月24日). “世界最低高度で飛行 JAXAの地球観測衛星がギネス認定”. 産経ニュース. 2019年12月24日閲覧。
- ^ a b 「超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)による地球観測」『写真測量とリモートセンシング』第56巻第5号、日本写真測量学会、2017年、248-251頁、2019年9月5日閲覧。
関連項目
外部リンク
- JAXA 第一宇宙技術部門 サテライトナビゲーター
- つばめ (SLATS)
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