フォークト関数

フォークト関数の例

フォークト関数(Voigt function、フォークトかんすう)は分光学スペクトルの幅にみられる分布関数である。ドイツの物理学者ヴォルデマール・フォークトの名にちなんでいる。ホイクト関数と表記される場合もある[1]。また、フォークト分布フォークト・プロファイル(Voigt profile)と呼ばれることもある。

X線ガンマ線を含む電磁波は固有の線スペクトルにコーシー分布(ローレンツ分布)であらわされる分布をもっていて、それを分光器で観測する時、原子の熱振動などランダムな事象による正規分布(ガウス分布)にしたがう分布の広がりが加わることになる。したがってスペクトルの分布はガウス分布 G(x; σ) とローレンツ分布 L(x; γ)畳み込みされた関数によって

V ( x ; σ , γ ) = G ( x ; σ ) L ( x x ; γ ) d x {\displaystyle V(x;\sigma ,\gamma )=\int _{-\infty }^{\infty }G(x';\sigma )L(x-x';\gamma )\,dx'}

と表される。ただしここで x はピーク中心を x = 0 とし、

G ( x ; σ ) 1 σ 2 π exp ( x 2 2 σ 2 ) L ( x ; γ ) γ π ( x 2 + γ 2 ) {\displaystyle {\begin{aligned}G(x;\sigma )&\equiv {\frac {1}{\sigma {\sqrt {2\pi }}}}\exp \left(-{\frac {x^{2}}{2\sigma ^{2}}}\right)\\L(x;\gamma )&\equiv {\frac {\gamma }{\pi (x^{2}+\gamma ^{2})}}\end{aligned}}}

である。

フォークト関数は正規化された分布関数の畳み込みなので、それ自身も正規化されている。

V ( x ; σ , γ ) d x = 1 {\displaystyle \int _{-\infty }^{\infty }V(x;\sigma ,\gamma )\,\mathrm {d} x=1}

参考文献

  1. ^ 吉原一紘「表面分析の基礎 (5)」『Journal of the Vacuum Society of Japan』第56巻、第6号、243-247頁、2013年。doi:10.3131/jvsj2.56.243。 

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